|はじめに|


 魚はやっぱり旨い。何が旨いかというと、魚種や大きさで味わいが違う。確かに本まぐろの背トロや、大きな松輪サバ、各漁家が自家製で作る湘南しらすなら、手が止まらなくなる。でも、みんなが言う一級品だけでなく、旬の時に旬のまま、ひとコツ加えて料理すると、小さなサバだって、見かけない魚だって、地域特産の魚やその加工品だって、実に風味が豊かなんです。
 世の中では食育とか地産地消などキャッチフレーズが溢れ、おいしいもの、安全なものと言われます。でも考えてみてください。完全に安全な食べ物がありますか? 私たちは自然のもの、養殖した生き物をいただいているのです。確かに毒としてメチル水銀や、人間が作り出した世界最強の毒物質ダイオキシンなどの問題はあるものの、エビや貝類、豚などが多く含んでいるコレステロールは、彼らが生きるために必要な成分として蓄積しているのです。そう、人の健康を保つための食料として生存している訳ではないのです。あくまで自然の生き物なんです。
 それから、私たちは身近なところで生産されたもの上手く利用し、時間もエネルギーも節約する必要もあると思います。そして、旬の素材の風味や食感を生かす献立をつくり、家庭の味としていただくのです。それには絵の具を混ぜて新しい色を造るように、旬の水産物と農産物を使って、素材から料理の味を想像しながら調理してみてください。その積み重ねによりレパートリーを増やし、「料理力」を付けて、豊かな食生活を楽しんでください。
(以下 略)
 二〇〇九年八月   著 者

 
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