馬術とは、騎手や馬の技量の巧拙を競うスポーツであると同時に、意思も感情もある馬という存在に真正面から向き合い調教を施すという「知的作業」の面も有している。したがって、そのような知的作業を施すために、その実施主体たる調教者には、馬および馬術思想全般に係る膨大な量の知識と経験が求められることになる。京都大学馬術部ではこのことを昔から重要視し、馬の調教を中心としたカレッジスポーツとしての馬術を学生期間中に大いに実践するための基礎知識を、「輪講」という形で学生自らがお互いの議論や指摘の中で身につける方式を伝統として受け継いでいる。
輪講という形式は、学生が主体となって行ういわばゼミのようなものであり、自発的な知識の取得方法としては非常に優れるものであるが、それに用いる教材としてはいきなり専門書を手にするわけにもいかず、かといって学術的な進展を取り入れていない、使い古された教材を用いるというのも、学問の府に身を置く我々としては何としても避けなければならないことである。
今回、現役馬術部員および若手OBの有志の力により、最新の学術成果を充分に取り入れた新しい輪講基礎資料が本書のようにまとめられたことは、上述のようなカレッジスポーツとしての馬術、なかんずく馬の調教を短い学生生活の間に全うしようとする若い意気ある学生諸君のためには非常に有意義なことであると思うと同時に、その内容の深さと広さ、そして明瞭さには感慨を覚えるものである。学生諸君におかれては、本書を輪講の際の基礎資料として充分に利用され、そして学生諸君の間で充分に議論し様々な面に興味と関心を広げていかれることを切に希望する。
本書が意気ある学生諸君にとって良き道しるべとなり、馬の調教という高邁でかつチャレンジングな目標に学生として積極的に挑んでいくための手助けの
1 つとなれば幸甚である。
(以下略) |