|はじめに|

 わが国の数学史上の奇才・久留島義太は「算法は題を設くること難し、術を施すことこれに次ぐ」といった。最近は職業的数学者の問題がはんらんして、今日の数学を育て上げた歴史的のよい問題は忘れがちである。これを憂いて、まず古今の傑作中から初等的問題を取り上げ、これに解説をつけた。これに加えるに、古今の珍しい話を集めたのが本書である。引用文は、すこしクドすぎる点もあったが、原典を愛するからである。

 中国やわが国の問題は、原典にさかのぼって調査もしたが、西洋の問題には、これが不可能のものが多かった。しかし、できるだけ広く資料を集めた。これによって、本書がわが国の数学教育の新しい文献になれば幸いである。  章を分って物語、図形、計算としたが、元来分類することは無理なものである。ただ検出に便利なためだけで、手当たり次第に読んで戴きたい。落ちたもの、足りないものはおって続編で取り上げる予定である。

 この種の著述としては、初めての試みであるから、本書の完成のために、読者の叱正と忠言を待っている。

 魔方陣と円周率については、あまり触れなかった。筆者に「方陣の話」(1954)「円周率の歴史」(1955)の著書があるからである。  私が本書の著述に思い立ったところ算友・浦田繁松氏は、私を励まし、原稿の閲覧に、加筆に、校正に力を尽くされた。いまここに本書の出版を見たのは、ひとつに浦田氏の賜物である。感謝の言(以下省略)

 
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