|あとがき|

 解説を閉じるにあたり、いくつか翻訳裏話を付け加えたい。翻訳を計画したのは 5 年ほど前に遡る。確か、小川(西秋)葉子さんからお誘いがあり、はじめたのがそもそもであった。しかし、途中で、川崎が共同研究でイギリスに滞在したり、共訳者の多忙などが重なり、なかなか翻訳がはかどらなかった。そこに、慶應義塾大学大学院の池田君が加わり、暑い夏休みに何日もかけて、3 人で翻訳を検討することによって、ようやく出版までこぎつけた。とにかく、約束が果たせて、ほっとしている。
(中略)
 最後のエピソードを一つ付け加えたい。本書を出すにあたり、99 年の 3 月初旬に、たまたま来日していた教授に会う機会をもつことができた。最後の打ち合わせをするために、小川氏と私が打ち合わせにするためであった。久しぶりにあった彼は、初老の紳士という印象であったが、3 時間に及ぶ話に、最初から最後まで熱弁を振るっていた。その熱意こそが、この本の翻訳を実現させた力だったのだと思う。訳者たちが、日本語の表題を「消費する文化(Consuming Culture)」としたらどうかと言ったときに、婉曲に「消費文化(Consumer Culture)」でなくてはならないと説明して下さったときの、説明の仕方に、彼の文化的教養と、イギリスと日本の背負ってきた歴史の違いと、彼の人柄の良さを垣間見ることができた。そのときの、彼の表情を忘れることができない。翻訳には、もちろん、努力をしたが、元々の文章が長く、日本語にしにくい性質があるので、わかりにくい箇所があるかとも思う。また、訳語については、最終的には、川崎が調整した。十分ではないかもしれないが、読者のご指摘を待ちたい。 
 繰り返しになるが、翻訳だけではわかりにくいので、小川葉子さんに、この本について解説を加えた論文ならびに背景に関して述べた論文を追加していただいた。併せてお読みいただきたい。


訳者を代表して
川崎賢一

 
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