|あとがき|

 平成七年(一九九五年)に恒星社厚生閣から『禅と創造性』を出版した。「創造性」および「禅」という二つのテーマ、また「禅と創造性」というテーマの研究は、私のライフワークである。それからすでに五年余りたった。その間に創造性および仏教に関して書いてきた論文や随筆などをまとめてみた。すると禅を含む仏教の心理についてまとめてきたことになり、仏教の心理とくに仏教と創造性および仏教と心理療法(カウンセリング)について、これ以前の研究を含めて長年にわたり究明してきたことが確認されるのである。本書がこれらの課題や研究方法や問題点について、多少なりとも示唆するものがあれば幸いである。
 第一部は、仏教の心理学的考察、とくに創造性との関係についての諸論文についてまとめた。第二部は、創造性の開発・教育を中心に考察している。
 本書に収録した諸論文の執筆については、多くの先生や友人達から有益な御指導やご示唆をいただいた。ここにこれらの方々に心からお礼を申し上げたい。収録諸論文は、すべて雑誌、編集書に発表されたものである。その初出を示せば、以下の通りである。
 第一部 仏教の心理と創造性
 第一章 「創造性の研究 ― 私の歩んできた道と課題 ―」=「創造性の研究 ― 私の歩んできた道と課題 ―」
『人間心理学研究』第一四巻第二号、平成八年一二月。
 第二章 「近代日本における仏教と心理学」=「仏教と心理学 ― 日本における対話の歴史 ―」『仏教と心理学・心理療法の接点を考える集い論集』仏教・心理学研究会 平成十一年二月。「近代日本心理学と禅」一九九九年五月二四日に日米仏教心理学会議(禅と深層心理学会議)において口頭発表した。
 第三章 「禅の悟りの心理と創造性」=「禅の悟りと創造性 ― とくに禅問答を中心として」『東洋大学アジア・アフリカ文化研究所研究年報』通巻第一四号、一九八〇年三月。「禅の悟りと創造性」『理想』第五八八号、昭和五七年五月。
 第四章 「密教と創造性」=「密教と創造性」山崎泰廣教授古稀記念論文集刊行会編『密教と諸文化の交流』永田文昌堂、一九九八年。
 第五章 「浄土教における念仏の心理 ― 選択集を中心にして ―」=「法然浄土教における念仏の心理学的考察 ―『選択集』を中心にして ―」『仏教文化研究』第四二・四三合併号、平成十年九月。
 第六章 「上座仏教におけるヴィパッサナー瞑想法の心理」=「上座仏教におけるヴィパッサナー瞑想法の心理学的考察」『東洋大学アジア・アフリカ文化研究所研究年報』第三十四号、二〇〇〇年三月。
 第七章 「健康法としての坐り方」=「坐る」成瀬悟策編『健康とスポーツの臨床動作法』臨床動作法B現代のエスプリ別冊、至文堂、平成四年一二月。
 第八章 「死の不安と癒し」=「死の不安」伊藤隆二ほか編『老年期の臨床心理学』人間の発達と臨床心理学六、駿河台出版社、平成六年。
 第九章 「仏教の今昔」
「法眼禅師について」=「山田老師と法眼禅師」『暁鐘』第二五五号、三宝興隆会、平成七年十月。
「インド仏跡巡拝記」上掲誌 第二七八号、平成十一年九月。
 第二部 創造性の開発
 第一章 「カウンセリングと創造性の開発」=「カウンセリングと創造性の開発」=『東洋大学文学部紀要』第四
八集、一九九五年三月。
 第二章 「研究開発と創造性の研究」=「創造性科学が求められる時代」『産業科学技術におけるイノベーション
促進に関する基礎調査』機械振興協会経済研究所、平成七年四月。
 第三章 「創造性の教育」=「学校教育で創造性を育成するにはどうするか」菱村幸彦監修・編集『変化の時代の
学校像』教職研修六月増刊号、教育開発研究所、平成七年六月。
 第四章 「セルフコントロールと性教育」=「性教育におけるセルフコントロール」性と心の教育刊行会編『性と
心の教育ハンドブック』群書、平成十一年。
 第五章 「創造性開発の諸問題」
「二十一世紀の課題と創造性開発の役割」=「二十一世紀の課題と創造性開発の役割」一九九九年五月一九日にクリエイティブマネジメント研究会月例会において口頭発表した。
「創造性開発の阻害条件と促進条件」=「創造性開発の阻害条件と促進条件」『発展する経営』第一巻第三号、MAC経営分析センター平成元年十月。
「気功ににおける関心事」=「私の気功における関心事」『気功』第三九号、日本気功協会、平成五年九月。
「自己の本性(創造性)にまかせるということ」=「自己の本性(創造性)にまかせるということ」『研究室報』第二五号、東洋大学文学部教育学科研究室、平成六年。
「宗教の立場から見た行の今日的意義」=「行のもつ今日的意義について ― 宗教的立場から ―」『催眠学研究』、第三七巻第一号、平成五年四月。
「禅の立場から見た死と再生」=「死と再生の現代における意味 ― 禅心理学の立場から ―」平成七年九月九日に日本応用心理学会第六二回大会のシンポジウム「死と再生の現代における意味」において口頭発表した。
 本書に収録した論文で、「禅の悟りの心理と創造性」は、前に執筆したものに改訂加筆したもので、そのほかは初出のままにまとめた。そこで記述に多少の重複が生じている。この点ご寛怒をお願いしたい。
 また快く本書に転載を許可して下さった群書に心から謝意を表したい。さらにまた各誌、各編書の版元および担当編集者に厚く御礼を申し上げたい。
 最後に、本書の出版にあたっては、恒星社厚生閣文字情報部および編集部の方々に大変お世話になった。心からお礼を申し上げたい。
平成一三年二月
恩田 彰

 
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