|発刊にあたって|

 近年、環境問題に対する関心と環境保全を求める声は内外において高まり,内陸水域の水質保全や排水処理における悪臭等の防止対策は焦眉の課題であります。
 殊に食品産業から排出される廃水は、BOD、油脂、食塩等を高濃度に含有するため、その処理は困難を極めており、これらの問題に如何に対処し解決していくかが食品産業発展の基礎を成すものであり、21世紀に向けてのたゆまぬ努力こそが、食品産業に関係する技術者が環境保全のために負わされた責務であると考えております。
 本研究組合は、平成2年8月に農林水産省の主導、助成のもとに食品、機械装置、建設業等23社が結集して設立され、組合名に冠したごとくクリーンエコシステムの確立を目指し、大学、試験研究機関の学識経験者の指導、序言を受けながら平成5年3月までの約3年間にわたって研究開発事業を実施して参りました。


 研究開発事業は、食品産業における微生物利用水処理技術高度化事業として環境保全に対し、自己の技術を通じて社会貢献を果たす決意をもった幅広い業種の企業技術力を集めて、産・学・官の有機的連携のもとに共同研究を行い、処理水質の向上を図った新処理技術の確立、栄養塩類の除去や脱色等の高度処理、装置のコンパクト化と低コスト化、悪臭の抑制、余剰汚泥の減量化及びその有効利用など広範囲にわたる研究開発課題に取り組んだものであります。
 この間、本組合の事業運営、研究開発の推進等について農林水産省をはじめ、学識経験者の諸先生のご指導ご助言を得て、研究開発活動の高度化、活性化を図るため斯界の権威者の諸先生によるご後援や先端技術・施設の現地調査等の事業を積極的に実施して参りました。このようなことから組合員各位のご努力と相互の研究協力によっておおむね所期の研究開発目的を達成してこの事業を終了することができました。


 このたび、本研究組合の3ヵ年にわたる研究開発の成果の公開発表会を開催するに当り、本事業の集大成として、また、この分野における今後の研究に有益な資料とするため、組合員の研究開発課題ごとの研究成果はもとより、本研究にご指導ご助言頂いた学識経験者諸先生の諸論考をご執筆頂いて、貴重な記念論文集を刊行することができました。
 本書は食品産業のための「最新バイオ水処理技術」として、食品産業廃水処理の現状の問題点とノウハウを集約したものとなっております。食品産業各社の廃水に適したシステムのよりよい選択のためにお役に立つことができれば、まことに幸いに存じます。

 
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