|はじめに|

  わが国の産業,経済の発展に伴い,国民の食生活は昭和40年代には,“合理化”,昭和50年代には“成熟”,昭和50年代後半から“飽食”と表現されるようになってきた.これらを支えてきたのは,国内生産の農畜水産物あるいは輸入の農畜水産物の流通の合理化および食品工業,卸売業,小売業,外食産業の合理化の関与する技術の進歩であった.

 食品の流通,加工,消費の流れ(食品の物流)を円滑に効率的なものとするためには,食品科学を基盤とする貯蔵,加工,包装,輸送,保管,販売技術の導入が必要であり,関連する機械装置,施設,機器,資材の活用が必要である.また,生産から消費にいたる各種の情報を収集整理し,その活用が必要である.

 このような食品の流通を一貫して技術的に解説した成書として昭和52年に社団法人食品流通システム協会が「コールドチェーン・ハンドブック」を刊行した.これは当時としては斬新な内容の食品流通に関する技術書であった.しかし,その後の科学技術の進歩によって,わが国のコールドチェーンもほぼ整備された段階となり,昨今では食品の低温流通はもちろん,常温流通をも抱合して食品の流通技術を思考すべき段階となった.

 このことから,今回「コールドチェーン・ハンドブック」の改訂にとどまらず,さらに新たな構想の下に食品流通に関する技術書として本書をまとめたのである.

 本書がわが国のみならず近隣諸国の食品流通の近代化にいささかでもお役に立つならば幸である.

平成元年9月
社団法人 食品流通システム協会
食品流通技術ハンドブック編集委員会

 
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