|改訂新版の序|

  読んでしまえば本棚に並べられ、いつしか塵をかぶってしまうものではなく、電話台横の本立に辞書と一緒に、いつも置いていただけるような本を、そして何かの時に、ひもとけば、きっと役立つものをと念じて書いた。
 それには、廃水処理技術にもとづく体系だけを積み上げたものは、参考にならない、示唆的な記述が少なく、問題提起に欠ける。また数式やデータを並べると、そこを飛ばして、自分の波長と合う個所しか読んでいただけない。本なんて、読み手次第でみな勝手にどうにでもとられてしますものである。育児書だって例外であるはずがない。


 それは、一つには工学・技術というものは本来面白いものである。その面白さを解りやすく伝えるというスポンジのような役になる人があまりにも少ない、ということではないかと思う。
 そんな着想から、この本は学術的でなくてよい、実用書として解りやすい形での取り組み姿勢で書いたつもりである。そしてこの分野に一石を投じ、そして反響を受け、一石の効果はあった。
 初版から、読み手の幅というか、厚みというか、深さというか、そういうものをしみじみ感じていたので、二、三版は部分的に改訂版として筆を加えてきた。今回は現場を対象とした問題提起を掘り起こして、昭和34年からこの道に入ってから現在まで27年間の個人的体験を出きるだけ、一般化し、普遍化し、以って“他山の石”として欲しいと願って改訂新版として書き更めた。
 活性汚泥処理も課題が残されており、まだまだ技術レベルとして、75点どまりと言うべきである。その重さを感ずると共に、逆に怖さを感ずるものである。


 もし、この本から微生物処理なるものの、何かを汲み取って戴けるとしたら、労作の効があったと私は喜ばしい。

 
ウィンドウを閉じる