|はじめに|
 魚類の栄養と飼料に関する参考書としては,1973年に東京大学故橋本芳郎教授編「養魚飼料学」が刊行され,水産学と水産増養殖の発展に大きな貢献をしました.その後,魚類の栄養と飼料に関する研究の目覚ましい進展により,その内容は数年にして改訂の必要が生じ,1980年に東京水産大学名誉教授荻野珍吉編「魚類の栄養と飼料」が新水産学全集の一巻として発刊されました.以来,今日までこの分野の唯一の参考書として大きな役割を果たしてきました.しかし,発行後二十数年を経過し,その間に魚類の栄養と飼料に関する基礎的および応用的研究も飛躍的に進歩しました.例えば従来マイワシを中心とした生餌に依存して発展してきた魚類の海面養殖では新型の乾燥固形飼料が開発され,このことがさらに魚粉代替原料の探索や環境にやさしいEco-friendly dietの開発など新しい研究分野の開拓にも大きな貢献をしました.

 このような観点から今回,恒星社厚生閣のご配慮により,「魚類の栄養と飼料」を改訂することになりました.前参考書では断片的にしか紹介されていなかった甲殻類の栄養と栄養素要求について,本書では1章をもうけて解説することにしました.また,持続可能な魚類養殖に不可欠な環境にやさしい飼料の開発についても書き加えることにしました.

 本書は,魚類の栄養と養魚飼料に関する諸事項を,その分野の第一線で活躍されている研究者によって分担執筆されたもので,記述に当たってはできるだけ平易な文章による解説を心掛け,研究者,学生また現場に携わる技術者の参考になるよう配慮しました.本書が魚類の栄養研究や飼料開発の一助となるとともに水産増養殖の発展に些かなりとも貢献するところがあれば著者一同これに勝る喜びはありません.
                       渡 邉  武
 
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