|はじめに|

 「百聞は一見にし如かず」とよくいわれる.われわれは,先に「水産増養殖システム」と題して(1)海水魚(熊井英水編),(2)淡水魚(隆島史夫・村井 衛編),(3)貝類・甲殻類・ウニ類・藻類(森 勝義編)の3部作を上梓したが,それらに載せた図版はすべてモノクロームであった.ポリクロームであればより理解が深まると思われたものが少なくなかったが,学生をも対象としたため,領価の点からモノクロで示すことにした.

 このたび,恒星社厚生閣の「清水の舞台から飛び降りた?」ような思い切った英断により,前版に採用した図版を厳選し,かつ新たなものも加え,しかも水産増養殖技術の実際を別冊ビジュアル版の形で,カラーで世に示すことを意図した.水産増養殖の技術は,現場を体験して初めて理解できるもので,それはあたかも園芸と同様,庭であれ鉢であれ1サイクルの“面倒”を経験して知ることができるのと同じであろう.その意味で,「百聞は一見に・・・」と冒頭に書いたのは,水産増養殖の分野においても実体験の有用性を主張したかったからである.しかし,そうはいっても実際に体験する機会を得ることは大方の読者にとってむしろ希有ではなかろうか.そこで,できるだけ臨場感を味わいながら技術を知って頂きたいと願って,カラー版で水産増養殖の実態を示すことにした.本書が,先の文章編をより深く理解するための補完となることを強く願う.
                     200年2月 編者識

 
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