|はじめに|
  本書の出版は,新水産学全集 17B「魚病学−感染症・寄生虫病篇(江草編)」の改訂を意図して企画されました.1983年(昭 58)の初版から 20 年を経過し,魚病とりわけ感染症・寄生虫病をめぐる状況は大きく変化し,この間に多くの知識や技術が蓄積され,教科書・参考書としては全面的に改訂すべき時期と思われたからです.また,17A「魚病学 - 診断・治療篇」が未刊であること,1996 年(平 8)に「魚病学概論(室賀・江草編集)」が刊行されたことに鑑み,今回は書名を「魚介類の感染症・寄生虫病」とし,その内容を感染症・寄生虫病に絞るとともに主なエビ類や貝類の病気も取り込み,原稿は全て書き改め,内容はもとより,分量も約 60%増となり,そのため B5 大型判として出版することにしました.
 本書の構成は,序論において魚介類の病気を本書の章立てとは別の観点から俯瞰し総述したほかは,原則として「魚病学−感染症・寄生虫病篇」にならい,各章巻頭に概説を置き,続いてそれぞれの病気について1)序,2)原因,3)症状・病理,4)疫学,5)診断,6)対策,の順に記述しました.また,関連文献を網羅するのではなく主要な文献を選ぶ一方,記事の根拠になる文献はできる限り丁寧に示すことに努めました.
 また,教科書・参考書として平易な記述を心がけ,関連分野専修の大学院生,水産試験場などの研究員,漁協などの魚病専門員,水産関連企業の研究員,生産現場の技術者などを主な読者として想定しています.内容や文体の統一性を高めるためにできるだけ少人数で執筆することとして編者の他,吉水 守,福田穎穂,畑井喜司雄,小川和夫,良永知義,横山 博の各氏に分担を依頼しました.各氏には,担当分野の第一人者として活躍中である上に国立大学の法人化などの機構改革の最中にあって,極めて多忙な時間を割いてご協力を頂きました.また,「魚病学−感染症・寄生虫病篇」の編者であられる江草周三先生には,企画に当たってご了解ご助言を頂き,さらに監修の労をお取り願いました.なお,諸般の事情により企画から出版まで 4 年の歳月を要し,執筆者には原稿の加筆・修正などのご迷惑をお掛けしました.また,読者の方々には,それでもなお,各章・節ごとに最新のデータや情報の時期に若干の差異のあることをお詫びいたします.
 本書が魚介類の感染症・寄生虫病に関心のある学生,研究者,現場の技術者の教科書・参考書として前者と同様に長く愛読されることを祈ってやみません.読者の皆様の忌憚のないご指摘を頂いて,改訂版を重ねることができればこれに過ぎる喜びはありません.
 
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