|はじめに|

 わが国の沿岸水域においては,高度経済成長期以後,赤潮の発生件数が増大し発生水域も拡大した.それに伴い養殖魚介類の大量斃死が頻発するようになり,大きな漁業被害の発生も珍しくない状況である.また陸水域においても有毒アオコの発生が問題になっている.有害有毒藻類のブルームは,わが国に限らず,人間活動によって生じた水域の富栄養化に伴う世界的な現象の一側面であるといえよう.

 これらの被害を防止あるいは軽減するためには,水域の富栄養化を防ぐことが基本であるが,藻類のブルームを確実に予防あるいは防除する方法の開発も極めて重要である.それには生物的,化学的あるいは物理的な手法が考えられているが,実用化された例としては緊急避難的な粘土散布以外には見当たらない.赤潮の予防や駆除,あるいはアオコの制御に用いる技術は環境にやさしいことが重要であり,この要件を満たすものとして生物を用いた防除技術の開発が期待され,わが国においても現在活発に研究されている.また,隣国の韓国においても近年,養殖漁業の拡大に伴って赤潮による被害が深刻化しているが,その状況や対策についても知っておく必要がある.

 そこで今回,赤潮やアオコ対策の問題点を整理し,対策技術の現状と将来についてまとめてみようと考え,日本水産学会水産環境保全委員会主催のシンポジウムとして,下記のものを企画した.

 
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