|はじめに|
 オゴノリ目藻類は世界各地の熱帯から温帯域に生育する紅藻類である.日本では古くから食用として利用され,寒天製造の際のアルカリ処理技術が開発されてからは粉末寒天の原藻としても利用されてきた.近年は,南米や南アフリカなどで寒天の原藻として大量に採取されており,東南アジアにおいてはアワビ,エビ類との混合養殖が行われている.さらに,オゴノリ類のもつ特有の生理活性物質を対象とした利用が模索されるなど,その有用性が世界的に注目される藻類資源となっている.しかし,これらオゴノリ類の分類は一般に難しく,生態など十分に把握されていないことから,資源としての利用面から混乱もみられる.
 このような利用と研究の現状や背景から,編者らが中心なって,日本大学生物資源科学部で開催された平成 13 年度日本水産学会において「オゴノリの研究の現状と新資源としての展望」と題したシンポジウムを企画した.
 内容は,1.オゴノリ目藻類の生物学,2.有用藻類としての利用の現状と課題,3.新たな利用の可能性と課題,の 3 部で構成され,種の分類や生理,繁殖特性などの基礎的知見を総括するとともに,日本および海外におけるオゴノリ採取・増養殖の現状を紹介し,さらに生理活性物質など含有成分に注目した新たな医薬品や餌料としての利用への展望,栄養塩吸収能力に注目した環境浄化システムへの利用などを総合的に討議した.
 本書は,標記シンポジウムで講演された内容を基にとりまとめたものであるが,本書を通して,世界的な規模で利用されている有用資源であるオゴノリ類を再認識し,新たな利用の方向への足がかりになれば幸いである.
 本シンポジウムの企画開催および本書の出版に当たって,日本水産学会シンポジウ企画委員および出版委員,ならびに恒星社厚生閣の関係各位に対して心からお礼を申し上げたい.
2001 年 5 月
寺田 竜太,能登谷正浩,大野 正夫
 
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