|はじめに|
 日本付着生物学会の前身である「付着生物研究会」は,昭和 47(1972)年 6 月に開催された東京大学海洋研究所の共同利用シンポジウム「海産付着動物に関する研究の現状と問題点に関するシンポジウム」(主催者:東京大学農学部 平野禮次郎教授)を期に発足した.平成 8(1996)年 4 月に組織改革し「日本付着生物学会」となった.同年 9 月には日本学術会議から学術研究団体として登録され,新たなスタートを歩み始めた.
 平成 9(1997)年 10 月には,学会として初めてのシンポジウム「付着生物の研究法 ― 室内実験と野外観察」を開催した.さらに平成 11 年 10 月 29 日に学会として 2 回目(研究会時代を通じて,通算 6 回目)のシンポジウム,「付着性イガイ類の分類と分布 ― その実態に迫る」を船の博物館で開催した.
 その主旨を講演要旨集より引用する.
 付着生物として最も馴染み深い付着性二枚貝・ムラサキイガイは,外来種(移入種)で昭和初期に日本へ入ってきた種である.その後,分布を広げた日本のムラサキイガイは Mytilus edulis の学名が用いられてきたが,近年,殻の形態研究や分子生物学的手法による分類により日本のムラサキイガイは Mytilus galloprovincialis であることが明らかにされた.
 さらに最近では,和名についてもムラサキイガイかチレニアイガイかの議論もある.一方,ミドリイガイやカワヒバリガイなど熱帯性や淡水性の付着性イガイ類の新たなわが国への移入により,これら外来種の分布の拡大など今後の動向は注目されるところである.そこで,付着性イガイ類のわが国における分布の現状とその分類学的知見を整理し,これら外来種の生態系や経済活動に与え影響などを考えるためシンポジウムを企画した.
 その成果を中心に,各執筆者の最新の研究成果を取り纏めたのが本書である.
 なお,このシンポジウムは日本付着生物学会の企画であるが,主催は財政援助を受けた(財)日本学術協力財団と日本付着生物学会とした.また,日本貝類学会,日本動物分類学会,日本ベントス学会,日本水産学会,船の科学館,マリンバイオテクノロジー学会の共催を得た.ここに記して関係機関に感謝する.
 
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