|はじめに|
 昨今,養魚飼料は急速に配合飼料化しているが,主原料となるマイワシ漁獲量の激減,飼料価格の高騰,残餌による環境汚染など養魚を取りまく状況は厳しさを増している.貴重な飼料資源を節約し,環境汚染防止にもつながる無駄のない給餌方法の開発は産業的,社会的にも極めて重要な課題となってきた.
 これらの問題解決には過剰給餌を少なくすることが一つの大きなポイントとなり,そのためには変動する魚の食欲に合致した給餌を行うことが重要になる.
 しかし,手撒き給餌でも機械給餌でもおのずと限界がある.そこで,魚が空腹になれば自分でスイッチを入れ,満腹になればスイッチを入れないという行動を利用し,魚の食欲に対応できる給餌技術として自発摂餌が注目されるようになってきた.現在のところ,自発摂餌を養魚現場へ普及するにはまだ多くの課題が残されているが,過剰給餌を極力減少させる可能性をもつ自発摂餌の研究や技術開発の意義は大きい.自発摂餌は養魚のための新しい給餌技術としての期待がある一方,魚類の行動,生理機能,栄養などの基礎研究のための新しい手法としての応用も始まっている.
 自発摂餌の研究は国内では 1995 年から開始された.これまでに文部省科学研究費補助金基盤研究グループ,水産庁,マリノフォーラム 21 および全国内水面漁業協同組合連合会では自発摂餌に関する研究が精力的に行われている.
 本シンポジウムは,自発摂餌に関する基礎と応用の両面についての現状を把握し,問題点を整理することによって,養魚のための新給餌法として確立すると同時に,新しい研究手法としての応用展開も目的として企画し,日本水産学会の主催により平成 12 年 4 月 5 日,東京水産大学において下記のとおり開催された.

 本書はこのシンポジウムの講演内容をまとめたものである.本書が自発摂餌の基礎研究や養魚への応用に際してさらなる発展の一助となれば幸いである.
(以下省略)
平成 12 年 9月

 
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