|はじめに|

 魚貝類の筋肉はわが国では主要なタンパク質源として多様な形態,特にねり製品をはじめ各種の加工食品原料として食品工業規模で利用され,魚貝肉の原料・加工特性を解明するためのタンパク質研究が必然的に活発に行われてきた.一方,魚貝類筋肉タンパク質の比較生化学的見地からの研究も着実に進められてきており,それらの研究により魚貝類の筋肉タンパク質の性状は陸上哺乳動物のものとかなり異なることがわかってきた.
 たとえば,ミオシンやアクチンは温度,pH,塩類に不安定であるとか,軟体動物のトロポニンは Ca 結合数が少ない等々であり,これらの特異性はタンパク質の一次構造ひいては高次構造の違いに起因しているということになる.
 近年,巨大分子であるタンパク質の研究法が飛躍的に発展し,素晴らしい成果をもたらしている.特にエドマン法や cDNA クローニングによるタンパク質の一次構造解析や X 線,NMR による高次構造解析など分子構造の解析研究の発展は驚くばかりである.それらによって解明されたタンパク質の微細な分子構造はその性質・機能と詳細に対比検討され,両者の関連性を解明しようとする研究は加速度的に進歩している.
 最近,魚貝類の筋肉タンパク質についても一次構造が相次いで解明されており,それらの構造と性質・機能の関連を検討することは単にライフサイエンスのためにとどまらず,今後の魚貝肉の一層の高度利用技術の開発のためにも極めて有意義であると考え,平成 11 年 4 月 5 日,東京水産大学において,日本水産学会の主催により下記のような内容のシンポジウムを開催した.(以下省略)

平成 11 年 5 月
西 田 清 義

 
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