この本は自分で星空を楽しむだけでなく、その感動を多くの人と分かち合いたいという人
のためのガイドブックです。初めて天体観望会を開こうとする人にはそのノウハウを、経験
のある人にはさらに充実した観望会となるようにさまざまな情報やアイデアの提供を心がけ
ました。
この本の初版は20 年前に出され、そのコンセプトは新版でも変わっていません。しかし、
その間にフィルム写真はデジタル画像に替わり、プロジェクターもパソコン対応のものとな
り、天体観望に便利な機器やパソコン・ソフトなどが出回るようになりました。また、天体
観望会の指導者も各地で養成され、徐々に増えてきました。特に観望会にとって画期的な
出来事として、ガリレオ・ガリレイが初めて望遠鏡を夜空に向け、宇宙への扉を開いてから
400 年目に当たる2009 年の世界天文年がありました。日本ではちょうど皆既日食も重なり
ました。このときに行われた天文イベントの中では天体観望会が最も多かったのですが、そ
の半数以上を天文同好会/愛好者が開催しました。しかし、観望会の開催依頼数はもっと多
かったのですが、対応しきれなかったのが実情でした。さらに、2012 年には日本で金環日
食が見られ、ますます観望会への関心が高まってきたようです。そのような観望会の開催要
望に応えようとする人をこの新版本が後押しできれば幸いです。
新版では、天体観望会のための新しいハードとソフトへの対応だけでなく、宇宙の年齢や
銀河系での太陽位置や恒星進化の分岐となる質量などについての新しい知見をその研究分野
の第一人者の確認を得て取り入れました。また、曇天・雨天になった観望会当日におけるメ
ニューの一層の充実を図りました。さらに、観望会の形式として駅前や街角で行うものも紹
介しています。これは、通りすがりに気軽に天体を観望できるので、星空に関心を持つ機会
を広げ、他の観望会にも参加してみようという気にするかもしれません。
もちろん、各種の教育機関での観望会実践例は多く掲載しています。特に小・中学校では
2011 年度から全面的に実施されている新しい学習指導要領(“ 脱ゆとり教育”)において、
「観察・実験や自然体験、科学的な体験を一層充実する方向で改善」が図られています。天
体観望会の開催は学校教育において一層望まれています。この本の「観望天体ごとの進め方」
には、天体の観察テーマも載っていますので、児童・生徒にとって自然における科学的な体
験にふさわしい自由研究課題が見つかるかもしれません。
初めての観望会は、まず家族や友人を相手に行うのがいいでしょう。ベテランでも観望会
の前にはチェックのために家族や隣人などに観望してもらいます。
(後略)
2013年8月
水野孝雄
縣 秀彦
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