|はじめに|

●本書刊行の目的 ―小・中学校の天文分野でも結構難しい!?―
 都市近郊でも,ネオンや照明などによる光害で,夜空の星々が大変見えにくくなってきました.最近では,日本各地で,一斉消灯を呼びかけて,住民全体で満天の星々を堪能しようとする催しが行われているほどです.また,このような催しが成功裏に終わる背景には,心の癒し効果への期待,言い換えれば,星を眺め,心からリフレッシュしたいという人々の強い願いがあるようです.
 しかし,星に対する強い憧れとは裏腹に,「夜空の星を眺めるのは好きだけど,天文はどうも苦手だ!」という方々は,意外と多いようです.例えば,挑発的な表現で恐縮ですが,皆さんはすでに小・中学校の理科授業で,月の動きについて勉強した(している)はずです.

(途中略)
 ところで,これまでの天文関係の本の多くは,小・中学校の天文(もしくは高等学校地学の天文)を十分理解していなくては読み進めることができない難解なものであったように思います.その一方,天文を苦手とする方々の身になり,また,天文を苦手とする方々を対象にして編まれた天文関係の入門書はほとんど見当たりませんでした.本書刊行の目的はまさにそこにあり,天文を苦手とする皆さんを,小・中学校レベルの天文の学び直しへと誘うとともに,その学び直しを支援することにあります.

●本書の構成 ―まず,小・中学校の天文をマスターするための準備をしよう―

 天体の動きや位置を観測すれば,すぐ天文が理解できるとは限りません.天文について本当に理解しようと思えば,観測の前に,基礎的な知識や考え方をしっかり身につけておく必要があります.例えば,方位,天文学的な距離,角度,大きな数の扱い,比例計算,単位の換算,光年という単位,視点移動,モノが見える理由,光と影,重力,空の形,星の位置の表し方……などを挙げることができます.
 本書『学びなおしの天文学(基礎編)』では,まず,このような基礎的な知識や考え方を,前半の計17のステップに分けて取り上げています.そして,ステップ1からステップ17へと順序立てて少しずつ無理なく学ぶことができるようになっています(“スモール・ステップの原理”,または“ステップ学習”と呼ばれています).復習の意味でも,自分なりのペースで,ステップ1から順番に読み進めていきましょう.
 ですから,途中のステップから読み始めたり,順番を無視して読んだりすることは極力避けてください.せっかく読んだのに,逆に難しく感じたり,十分理解できなかったりすることになってしまいます.
 また,本書はただ読むだけではなく,自分なりの考えを実際に書き込む課題(チャレンジ)や簡単な観測や実験(クイック・ラボ)がたくさん設定してあり,退屈せずに実感をもって理解できるように工夫してあります.
 さらに,後半のステップ18からテップ27では,天文学の入門として,「太陽の1日の動き」と「季節変化の原因」を取り上げ,天文学のおもしろさや醍醐味を味わって頂こうと思います。
 そして,本書をマスターしてから,2分冊のもう1冊『学びなおしの天文学(応用編)』に進めば,小・中学校の天文がうまく理解できるはずです!
 老若男女を問わず,本書が多くの方々の手にされ,“星を眺めるのも好きだけど,天文について探究するのも好きだ!”という方々が少しでも増えることを期待してやみません.
満天に煌めく星々に願いを込めて
                     松森靖夫

 
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