|はじめに|

 ブラックホールは現代の天文学ではもはやかかせないアイテムだ.しかし,ブラックホールという名前が超有名な一方で,その実体については意外と知られていない.というか,噂だけが一人独り歩きして,誤解されていることも少なくないようだ.さらにブラックホールについて学ぼうと思っても,オハナシだけの啓蒙書と数式だらけの専門書の両極端にわかれていて,帯に短し襷に長し,というのが現状である.
 本書『ブラックホールを飼いならす!』と姉妹書『ブラックホールは怖くない?』では,ブラックホール宇宙物理学について,相対論的な考え方の基礎から,実際の宇宙における応用までを,最新の成果に基づいて紹介しようと試みた.本書は応用編で,姉妹書は基礎編に相当するが,それぞれ独立に読めるように配慮してある.本書では,まず第1章でブラックホールを扱ったSFを紹介したのち後,実際の宇宙においてブラックホールなどが重要な役割を果たしている現象を説明し(第2章,第3章,第4章),ブラックホールの一生(第5章),自転ブラックホールの特徴(第6章),ワームホール現象(第7章)などに触れて,最後の第8章でブラックホールの利用法についてまとめた.
 姉妹書と同様,読者の理解の便を図るために,イラスト・画像・グラフや表などを多用した.また空間の歪みや光線の曲がりなど,しばしばいいかげんな説明図で済まされるようなものも,本書では相対論を用いてきちんと計算し,その結果を,視覚的にもわかりやすく表現した.本書の性格上,数式でくどくど説明することは避けたが,簡単な式は理解の一助にもなるので,グラフを描くのに使った式や簡単な導出などは,数式コーナーとして別枠でまとめた.本文で紹介できなかった余談や趣味の話は,コラムとしてまとめた.
 高校生以上であれば,本書は十分に読めると思う.ブラックホールやブラックホール宇宙物理学に興味のある人,これから一般相対論を学ぼうとする人,さらには高校や大学において物理や天文学を教えている人たちに,本書を活用してもらえば幸いである.またもちろん,SFやSFアニメの好きな人にも本書を手に取っていただければ,ありがたい.
                            筆者

 
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