|はじめに|
 宇宙を見て,感じて,楽しもう.私の頭はいつもこの言葉で満たされています.研究するときの気持ちもこれですし,研究者でないお友だちと話をするときもこの気持ちで宇宙について語ります.この本も,「宇宙の灯台」と呼ばれる不思議な星について,その面白さを,見て,感じて,楽しんでいただきたい一心で書きました.  宇宙が魅力的なのはなぜでしょう.そこには驚きがあるからでしょう.例えば,理論の産物のように思われていたブラックホールが,実際に宇宙にはたくさん見つかっています.地上の実験では決して調べることができない世界が宇宙にはあります.だから,自然科学という観点からの宇宙の魅力は最高です.また,景色の美しさも宇宙の魅力です.美しい星空は感動を与え,人の心を解き放ってくれます.私は,晴れた夜には星空を楽しむ星空ファンでもあります.  「宇宙の灯台」というニックネームをもつ不思議な星は天文学者の間ではパルサーと呼ばれています.現在では「回転駆動型パルサー」と分類されるこの星は,灯台の光の点滅のように電波を周期的に発する星として発見されました.とても面白い星なのですが,このパルサーについてまとまった書籍はこれまで発行されたことがなかったと思います.大学生や大学院生になってパルサーについて研究がしたいと思っても教科書がありません.理由は簡単で,パルサーについてわかっていることが少なすぎるからです.かなり根本的なことが不明なのです.しかし,最新の成果を踏まえ,思い切った議論を加えて,パルサーとはこんな星だよというものをこの本では描き出してみました.これも思い切った試みではありますが,理科の知識があまりなくても読めるように,やさしく噛み砕いた説明をしました.理解の役に立つ簡単な実験も紹介しています.おそらく宇宙に興味のあるどなたでも楽しんでいただけると思います.   2006 年 3月 柴田晋平
 
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