|はじめに|
 生あるものは必ず死ぬ.地球も決して例外ではない.現在,地球は刻々住みにくくなっている.それを科学技術で防ぐわけであるが,この戦いは,ますます激しくなっていくであろう.そして,もうどうにもならなくなったとき,人間は愚かにも自然を征服しようとした間違いに気づくのである.
 ある学者は,人類滅亡の時は壮絶な最期であろうという.最高に進んだ科学技術で自然と戦い,ついに全滅するというのであるが,私の予測は違う.未来の文明は,現在では考えも及ばないほど進んでいるはずである.そのような最高の文明をもった人類が,自分自身の死が確実になるまで地球にとどまっているような愚かなことをするであろうか.かつて日本軍がアッツ島やサイパン島などで全員玉砕したのは,あとに続く者を信じたからである.しかし地球の滅亡に明日はない.
 ロケットの先駆者ツィオルコフスキーは「地球は人類の揺りかごである.だから人類はいつまでも揺りかごの中にとどまってはいない」と言った.まさにそのとおりで,人類は新天地を求めて大移動するに違いない.
 太古から人類は,常にどこか,もっとよい場所へ移り住みたいと考え続けてきた.300 万年以上前に東アフリカの一部にいた祖先は,それから 100 万年ほど後に中国へ渡り,更に陸続きになっていたベーリング海峡の氷原を進んでいったではないか.過去に起ったことは未来にも起りうる,ただし今度の行き先は宇宙しかない.そのときの人類の大移動はヴュルム氷河期後の時とは比べものにならないほどスケールは大きい.
 地球に住めないと分かった時,宇宙船は隊列を組んで次々と地球を飛び立っていくであろう.だが沢山の人工宇宙島か,人が住める新天体が確保されていなければならない.これは決して夢物語ではなく,現実に人工宇宙島のはしりである国際宇宙ステーションの建設が始まっているのである.
 こうして人類は宇宙のどこかで新しい営みを始めるであろう.つまり我々地球人は最後の人類ではないのである.それなら最初の人類ともいいきれない.なぜなら同じようにして,どこかに住んでいた人類の祖先が遠い過去に移住した可能性もあるわけである.
 要するに我々は宇宙のことを,もっともっと調べなければならない.それは宇宙への挑戦といってもよい.地表で暮らしていた人類が,やがて大空へ飛び立ち,そして今,宇宙へ進出するまでになった歴史を順を追って語っていきたい.
   2000 年 6 月 5 日
前川 光
 
ウィンドウを閉じる