|はじめに|

 天文学は間違いなく最古の学問である.古代人たちは太陽・月・星に支配され,生活してきたといってもよい.そして農耕の季節を知るために太陽の観測が行なわれ,更に星座が生まれた.
 だが驚くべきことに,この古代人の得た知識が今日まで引き継がれているのである.古代人の星空への憧れと畏れは,そのまま私にも残っている.
 本書の 1〜3 章は星座といっても観望の手引書ではなく,星座の生いたちと,その裏話である.巻末の星表・星名表などは必要に応じて利用していただきたい.4・5 章は古代天文学関係,6 章は我々が日常接している天文学の意外な面や間違われていることを中心に太陽・地球・月といった身近なものに限定して扱った.
 本書は星座・古代天文学・日常の天文学と三つに大別できるが,ばらばらのテーマではない.現代の天文学に至るまでに人々は様々な試行錯誤を繰り返してきた.その人々と天文学との結びつきという観点で一つにまとまっている.私の原文「星空と人生」を加筆したものであるから,それは当然のことなのである.
 星空を眺め,その背景に昔からの多くの人々の営みを思いうかべていただけたら幸いである.


   2000 年 5 月 1 日
前川 光

 
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